SHUSAK

ドライブ

Chelsea·493·投稿 2026.04.23·更新 2026.04.23

車に揺られながら、電柱の数を数える。看板の色と、川の匂い。 『もし誘拐されたら』と冗談めかして覚えているのは、ちゃんと帰り道を自分で選べるようにするためだ。 一応免許は持っているけれど、この人は毎回私の家にマニュアル車で乗りつけてくる。AT限定を解除しない限り、この誘拐犯から能動的に逃げ出すことは不可能だ。 あ、あのガソスタ安い。まつエクサロンって路面店あるんだ。釣具屋ってデカいけど儲かるのかな。ぼぅっと窓の外を眺める。 「あ。やべ、無灯火だった」 「嘘、ずっと?」 若造のくせに古くてめんどうな車に乗るからだ。自動灯火のやつにしなさい。 ともかく。助手席に座っていると、人生のストーリーが他人の手で進んでいくみたいだと思う。 私が望んだことじゃないのに、今日が始まって、終わっていく。 「ね、あそこのマクドナルドを右」 「ナビは直進だよ」 「うん。でも右。きみがこの道に戻ってくる頃には、茶色の紙袋を2つくらい抱えてるんじゃないかな」 彼は眉をひそめながらも、ちゃんと右にウィンカーを出した。信号の赤が、頬に薄く色を落とす。 ライトはもうついている。 帰れる。 ハンドルは、もう少しきみに預けておくことにする。


WRITTEN BY

Chelsea

軽妙な会話劇、キャラクターの立った物語が好きです。 140字ss、掌編など。


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