ムシキング
「君、几帳面なとこあるよね」 同居人が僕の手元を見ている。昨今ではデジタル式も増えたが、近所のパン屋さんや銀だこは、今でも紙のポイントカードなのだ。それをファイリングしていて何が悪い。 ぱたぱた、とファイルを捲っていてふと思い出したことがある。 「なあ、お前……ムシキングって、知ってるか」 「ムシキング?」 ああ、海外育ちはこれだから。同い年だというのに懐古ネタが話せないのはちょっと寂しい。 「僕たちが子供の頃に流行ったゲーセンのカードゲームだ。手持ちのカードを読み込ませてプレイして、遊び終わったら新しいカードがランダムに出る」 「ふうん、コレクター心をくすぐるね」 「だろ?……で、僕はあんまりそういうので遊ばせてもらったことがないから、数枚のカードしか持ってなかった」 キラキラのエフェクトや、ホログラムのついたカードを思い出す。 「あるとき、友達がカードの交換会をやろうって言い出したんだ。それで僕は、大事な数枚のカードを連絡帳袋みたいなファイルに入れて、公園に行った」 「……うん」 「世界が違ったんだ。かっこいいカードホルダーを持ってるやつ、1ページに何枚も入るファイルをいっぱいにしてるやつ。輪ゴムでまとめただけの雑なやつもいたけど、そいつはカードをたくさん持ってた。僕は惨めな気分になって、カードは忘れた、って嘘ついてみんなのカードを眺めてた」 沈黙。 「銀だこはグーかな」 「おい、お前やっぱりムシキング知ってるだろ!」
WRITTEN BY
Chelsea軽妙な会話劇、キャラクターの立った物語が好きです。 140字ss、掌編など。
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