SHUSAK

望むのは青

Chelsea·467·投稿 2026.04.23·更新 2026.04.23

「きみと同じ海が見たいよ」 ぽつりと零された言葉がよく分からなくて、僕は、 「じゃあ今から海行く? 暗いかもだけど」 と返した。 「違うよ」 僕の両頬に手を添えて、また彼女は繰り返した。 「きみの青が見たいの、私」 そこまで言われてようやく、記憶の片隅にあった語彙を引っ張り出せた。 「ええと、クオリアの話?」 こくり、と頷いてくれた。 「きみと私って別個の人間なんだって思ったらさ。もうやなの」 ぐりぐりと僕の身体に頭を擦り付けながら続ける。彼女のシャンプーがふわりと香った。かわいらしいいきものだ。 「きみの細胞に浸透しちゃいたい。そしたら同じ海が見えるかな」 「角膜まで浸透するの?」 「そう」 僕がここで笑ってしまったらきっと彼女は悲しむだろうから、抱きしめて肩をとんとんと叩いた。 「海、見に行こうよ。それで僕らに別の青が見えててもさ、お互いの瞳に映る青を好きになれるかも」 「それが本当の青か分からないのに?」 「分からないけどね、きっと好きになるよ」 だからあなたを好きになったんだ。自分の耳が熱を持っていく。 「あ、朱くなってる」 彼女はやっと嬉しそうに笑った。


WRITTEN BY

Chelsea

軽妙な会話劇、キャラクターの立った物語が好きです。 140字ss、掌編など。


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