SHUSAK

ゆゆゆ·1,469·投稿 2026.04.22·更新 2026.04.22

 近所のスーパーで肉を買った。  そのスーパーは夜遅くに訪れても、肉や魚、弁当なんかもほとんど残っていない。  今日もどうせ大したものは残っていないだろうと、なかば諦めていた。  案の定、売り場に商品はほとんど並んでいない。  諦めて精肉売り場を後にしようとした時、ふと1つだけ売れ残っていた一パックが目に入る。  そのパックのラベルには「肉」とだけ書いてあった。  「? なんだこれ?」  一目みた感じでは普通の豚肉にみえる。  なにより、半額に値引きされており、調理したとき変な色になったり、不味かったりしたら捨てればいいか、と軽い気持ちでその肉をカゴに入れる。    臭み消しのつもりで、ネギとニンニクを入れて謎の肉を炒めた。  見た目におかしいところはない。臭いも特に変わった感じはしない。  恐る恐る一口かじる。弾力があり、噛み切るのが難しい。  売れ残りの安い肉だったのだから仕方ないことだろう。  臭みはないが、しばらく噛んでいると味がなくなり、味の抜けたガムでも食べている気になってくる。  大した量でもなかったが、全ての肉を食べ終える頃には、顎が筋肉痛のなっていた。    「お肉は食べましたか?」  急に耳元で低い声が聞こえる。  いつのまにか寝ていたようだ。  携帯の画面を確認すると、午前二時過ぎだった。  こたつから這い出て、ベッドへ向かう。  寝ぼけており、声が聞こえたことなど忘れていた。  布団に入り、うとうとと意識を失いかけている。  「お肉は食べましたか?」  再び同じ声が聞こえたようなきがして、はっと目が覚める。  思わず飛び起き、電気をつける。  辺りを見回しても、そこにはいつもと変わらない部屋の景色が広がっており、なんの異常もない。  「なんだ。 気のせいか」  電気を消して、布団をかぶる。  すぐに睡魔が訪れ、夢と現実の区別がつかなくなる。  「お肉は食べましたか?」  今度ははっきりと聞こえた。  「お肉は食べましたか?」  声はだんだんと近くなる。  「お肉は食べましたか?」  もう確かめる勇気はない。  布団を頭まで被り、丸くなる。  「お肉は食べましたか?」  今は冬だというのに汗が止まらない。  「お肉は食べましたか?」  胃はきりきりと疼き出す。  口の中に酸っぱいものが込み上げてくる。  布団の中で震えながら嘔吐する。    身体がどろどろに溶けていく。  腹にはガスが溜まり、異様なまでに膨れ上がっている。  身体中に蛆が涌き、皮膚は口ちぎられ、傷口からは膿がどろどろとながれ出ている。  カァカァとどこから共なくカラスが飛んでくる。  カラスの群れは、身体に群がり、あっちこっちを突き回すが痛みはもう感じない。  しばらくすると、野犬がやってくる。  野犬はキャンキャンと騒々しく吠えたて、カラス達を蹴散らす。  野犬は勢いよく太ももに噛り付き、腐った肉を引きちぎる。  いつの間にかネズミが何匹か、身体の周りを這い回っている。  首元に登ってきたかと思うと、口の中に入り込む。  何匹も何匹も入り込む。  ネズミ達は内側から肉を食い進め、しばしば肋の隙間から顔を覗かせる。  最後は蛆とシデムシが残った。もはや食えるところなど残っていないのに、それでもなお身体中を這い回り肉という肉を食い尽くす。  そうして骨だけになった。  激しく咳き込み、目を覚ます。  布団の中や着ていた服が、吐瀉物でぐしょぐしょになっている。  窒息しかけていたのか咳が止まらない。  ぜえぜえと情けない音を立てて、肺が空気を取り込もうとする。  だんだんと思考が回復してくる。そうして、さっきまで見ていた夢のことを思い出す。  もし、食べてしまった謎の肉を吐き出していなければ、一体今頃どうなっていたのだろうか、そんなことを思った。


WRITTEN BY

ゆゆゆ

感想

感想を書くには ログイン してください。

まだ感想はありません。