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ショートケーキのいちごについて

鯖寿司·560·投稿 2026.04.22·更新 2026.04.22

 眞鍋と試し行動の相性が悪い。相手が子供で、損をするのが自分だけだとなればいくらでも受け入れてしまうのだから厄介だ。大人ならば子どもに譲るもの、なんて誰か定めたルールだというのか。 「ねぇねぇ、眞鍋さん。ショートケーキの上のいちごちょうだい」  真経津の試し行動としても弱いただのおねだりに、迷いもせずに差し出してしまう。呆れた甘さだ。 「あーん」  雛のように口を開いてまつ、真経津のその姿に眞鍋が眉を下げて笑った。 「甘えただなぁ」  フォークで赤い実を刺して差し出す。その手首を掴んで自分の方に引き寄せた。噛み締めると口に広がる甘酸っぱさ。 「え」  自分のケーキからいちごをとって真経津の口に押し付けた。大人しく口に入れて、もくもくと咀嚼する。動く頰を見て、真経津のケーキからいちごを奪った。 「あ!」 「眞鍋」  咄嗟に口に力を入れて拒否をする。戸惑うようなその空気、眼差し、それを無視して唇に押し付ける。潰れたとしても味は変わらないだろう。 「開かなきゃフォークはお前の唇を刺すだろうな」  いちごの果汁か血かもわからない。同じ赤色なんだから。  頑なだった唇は、脅しに諦めてゆっくりと開いた。 「おいしい」 「いちごは1人一個、決まりだろ」 「ちょっと甘やかされたかっただけなのに」 「ああ、俺もちょっと甘やかしたかっただけだよ。自己犠牲が好きな大人を」


WRITTEN BY

鯖寿司

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